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石子順造的世界~図画工作美術!

先日、府中市美術館で現在開催中の「石子順造的世界 美術発・マンガ経由・キッチュ行」という展覧会に行ってきました。
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石子順造さんは1960年代の美術評論家。その評論家の視点を通じて1960年代~1970年代の日本の文化を見直す、というユニークな展覧会です。
批評対象となったものは、いわゆる「美術」のみならず、マンガや、街にあふれる大衆デザイン(例えば土産のペナント、食品サンプル、銭湯の背景画など)にまで多岐にわたるらしく、今回の展示も「美術」「マンガ」「キッチュ」の三つに分かれて構成されていました。

展示の目玉はなんといっても、つげ義春「ねじ式」の全原画!ガラス越しですが、大ゴマで表れる精密な描写や細かなペンの動きが生々しく伝わってぞくぞくしました。あと、林静一のアニメーション!かっこよかったー。レトロなテレビで映してるのがまたいい。マンガのコーナーには当時の名作マンガが沢山置かれていて自由に読めるようになっているので、時間に余裕を持って行くのがおすすめです。「キッチュ」コーナーでは写真撮影もOK。ここに展示されているような街にあふれるデザインを改めて眺めると、何故このようなデザインが定着しているのか不思議に思えてくるし、普段は全く気にとめないのに面白おかしいものにも見えてきます。「モナリザ」や「紙幣」をデザインに取り入れたもの、銭湯の背景に描かれる富士山、賞状やトロフィーのデザイン、婦人雑誌の表紙、これらが通俗的なものとして広く受け入れられている所以ってなんだろう。いわゆる「美術」には非日常的なものが多いけど、こういう日常の中にも共通のイメージや美的感覚があるはずで。果ては「いい石」なんて曖昧なものにも、なんとなく共通のイメージがある不思議。そんなことをぐるぐる考えながら、石子順造的世界を堪能させてもらいました。かなり、面白い展覧会だったと思います。
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で、今回紹介したいのはこの展示だけではないのです。
市民ギャラリーで開催されていた、『府中市立小中学校 連合図工美術展覧会』
都築響一さんのメルマガで「面白そう」と触れられていたので覗いてみると…。
これがまた、かーなーり、楽しかったのです!

あ~自分も昔この課題やったなぁと懐かしむ定番の題材、自分で作ってみたくなるような題材、先生の工夫が感じられて感心しちゃうような題材、とっても多種多彩。
美術教育に携わっている人にとっては、色んな題材・指導法が見えて勉強になるし、所狭しと並べられた作品の中には、思わず足を止めてしまう傑作も数多く、気になるものはつい写真まで撮ってしまいました。ということでちょっと紹介~。


石子順造的世界で食品サンプルたっぷり見た後だから思わず目に止まった作品。
身近にあるもんを形にすんのは面白いよね~。
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色々くっつけて最後に全部銀色にしたところがこの題材のポイント!
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雑誌をコラージュしたものをさらにドライポイント(銅版画)で表現するという作品。
ただコラージュするより面白いし、ドライポイントを自由にさせるより簡単にシュール感が出せる!
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ポスターの課題は定番だけど、たまに適当に描いたっぽいのにそれが味になる作品がある。
「人は自分で固められない」というコピーがつけられています。
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これはかなり素材の使い方が達者!うまい。
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視点が混在してて面白い!下側は平行で見てて、上側は高いところを見てて、真ん中は俯瞰!どういう題材だったのか詳細が気になる作品。
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色は金、銀、黒。素材は新聞紙やダンボール。限定したからこそ出るこの雰囲気。
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新聞紙に描く、という単純な題材だけど、白い紙より面白い風合いです。
なぜか全部カブ価のページだった。でも描かれてるのは大根。
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お~、いい食べっぷり!!
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定番の、面白みのない題材も沢山あったけど、発想次第で面白い作品になるよってことを伝えれてるような題材も沢山あった。技術ばかりを追求するような題材で、美術嫌いを増やすよりは、苦手意識を持ってる子にも発想でどうとでもなる楽しさを伝えれた方がいいもんね。
「美術」に対する既成概念をくつがえす。美術教育の醍醐味はそこにあるべきなんじゃないかと思います。

この展覧会見て、もう一度美術講師をやってみたい気になったり。。ならなかったり。。。

この連合図工美術展覧会は2月19日(日)まで!
石子順造的世界は2月26日まで!
興味のある方はお見逃しなく!
by nicolaus_92 | 2012-02-13 22:27 | おすすめ