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ル・デルニエ・クリ

昨日は六本木スーパーデラックスにて、Le Dernier Criの来日ツアーイベント『超解毒波止場』に行って来た。

Le Dernier Cri…フランスはマルセイユで、シルクスクリーンを使ったアート出版物を編集・発行する工房。
その主宰であるパキート・ボリノさんは出版芸術家と呼ばれているようだ。
ふーん、そんな肩書き初めて聞いた。なんでも、世界各国で埋もれている作家、漫画家の本やポスターを日夜シコシコ作っているという。ほうほう。しかも手刷りで。お~なんだか愛を感じるぜ。
てことで行ってみると、物販にLe Dernier Criの出版物がいっぱい。
どれもしっかりとした紙にオールカラーで印刷されている。なんだろうこの大量生産できない特別な感じ。ただの画集には思えないほど本そのものから濃い~いモンが匂ってくる。
せっかくなので一冊購入。
パキートさんが目をつけた日本人作家、特殊漫画家の根本敬さんと美人画家の市場大介さんの絵が載ってるやつ。
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どれもエログロで、特に私はエログロ好きなわけではないのだけど、むしろちょっと苦手だけど、本の手触りや色合い、テキスト一切なしで脈絡もなくただ色んな絵がミックスされている感じに衝撃を受けた。これ2000円は安い!と思った。例えるならDJの出版バージョン?音に置き換えると爆音ノイズ系?パキートさんは普段からノイズミュージックをたしなんでいるとのことですし。

イベントもすごいカオスティックで、色々とにかく凄かった。
前座は美人画家の市場大介さんによるライブ。でっかい犬の被り物をした女の人(JON(犬))と一緒にフォークミュージック(?)を披露。
メイントークはパキートさん、根本敬さん、蛭子能収さん、佐川一政さん。
佐川一政さんがパリの人肉事件の犯人だと途中で気づいてびっくり。
昔ヲルガン座のイベントで佐川さんを取り上げた悪趣味な番組が紹介されていたのを見て存在を知ったのだけど、まさか本人に会えるとは。
そしてこのトーク。まとめ役不在という感じで皆好き勝手話すので結構しっちゃかめっちゃかだった。ここに五所純子さんがいれば、もっと場も華やぎ、冷静にこのオヤジたちをまとめてくれるんだろな~なんて思いつつ。(五所さんはドミューンでも根本さん、パキートさん其々とトークしている)

脱線するけど五所純子さんのブログは超かっこいいです!日めくりカレンダーに手書きというスタイルは真似したくなります。

話を戻す。トークで一番笑いが起きたのは、蛭子さんの「今日は翻訳があまり良くないですね~」の一言だった。それ位パキートさんの翻訳者の日本語がわかりにくく、途中で見かねた外国人スタッフが交代するほど酷かった。意訳をしないととんでもないことになる爆弾発言もあり、翻訳するのも大変なんだろうな、と同情してしまうけど。「え~、天●陛下を殺せ」とかそのまま放り投げちゃダメでしょう。ハラハラするわ。

最後には、これは芸術だとかこれはアンダーグラウンドだとかの線引きなんて馬鹿馬鹿しいよね。作ってる本人はそんなこと考えちゃいないよね。というところで話が落ち着き、2時間のトークが終了。
いいな~と思ったのは、Le Dernier Criの本やポスターの値段設定。
貧乏人でも手に入れることができる数千円という設定は、パキートさんの沢山の人に手にして欲しいという思いからだという。絶対お金かかってるのになんて良心的。
それは金持ちにしか買えない芸術作品がはびこるメインストリートのアートマーケットに対しての反発、のようにも感じられた。もちろん一点ものでないから可能な値段設定なんだけど、著名な方の版画作品は数も少ない上に比べ物にならないほど高い。パキートさんは手間や時間を惜しまず、沢山刷って安く提供。本は1000円から買えるし、ポスターも一枚5000円!
やはり愛を感じて、貧乏人としては拍手を送りたい気持ちになった。
普通は評価されているからこそ高いのだし手にする意味もあるのだ、という考え方もあるけど、著名であるということに誤魔化されている部分もきっとあるだろうな、と思う。どこの誰だかわかんないけど、この絵むっちゃいいじゃん!となるほうが純粋なんじゃないかしら。
つくづくそういう目を養い、そういうモノにお金を使いたいもんだ、と思う。
世界各国の、その国の人でさえ目を通さないような出版物までチェックし自分の感覚でいい作家を探し、愛ある手刷りで本にする。出版芸術家、パキート・ボリノ。そう呼ばれるのはなんか理解できた。ちょっと都築さんと感覚が似ているかも。都築さんもそういう意味じゃ出版芸術家だ。

トークの後、最後は漫画家、宮西計三さんのバンド。1時間くらいカオスティックな演奏をノンストップで続け、終わったときは、終わったことにちょっと感動した。

「本は理想的な毒」とはこの日のパキートさんの言葉。毒は静かに溜まっていき、内側から人を変えていく。
毒は、確かにいただきました。
消化しきれない位濃いイベントだったが、行って良かった。

なんか最近目につくイベントや本が「貧乏」というキーワードでつながっているように思える。
そりゃお金は欲しいけど、大金を手にするには宝くじでも当てない限り、せっせと働くしか方法がない。それもできれば避けたいので、貧乏な中で(社会のシステムからはずれたところで)ファンタスティックに生きている人に惹かれるんだと思う。

思う存分毒されて。
出来るだけおもしろおかしく生きていくぞ。
by nicolaus_92 | 2010-09-26 14:25 | おすすめ