2014年2月号

今年の1月に初めての海外旅行で、台湾へ行きました。
といっても行ったのは台湾南部の古都、台南のみ。しかも2泊3日(内、一泊は夜行バス)のギリギリ強行スケジュール!
行きずりの成り行きで、飛行機のチケットとったのは、出発の2日前。
心の準備も、下調べも全部すっ飛ばし、マヌケ宿泊所のオーナー、イズモリさんに全てを委ね、とにかく行ってしまうこの感じ!一番テンション上がりますね。
しかも目的が、「台南に新しくできたゲストハウスのオープニングパーティーに行く」という、地元か!とツッコミたくなるような日常の延長。
謎の余裕かまして、飛行機でも台湾の事なんも調べず、読書に勤しんでおりました。

読んでいたのは、「パパラギ」〜はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集〜
太平洋の島国サモア、ウポル島の酋長ツイアビが、ヨーロッパの国々を回り、そこで見た白人(=パパラギ)の文明社会というものを島の人々に語った記録集。
トピックは服装から住宅、職業、金銭、経済、時間などなど。「はじめて文明を見た」という副題の通り、ツイアビの言葉には文明に対する新鮮な驚きと、疑問、批判に満ち満ちていた。
靴の事を「ちいさなカヌー」と表す言葉の柔らかさ、文明社会とは対照的に語られる島の人々の暮らし。すごく面白くて、どんどん読みすすむうちに、自分の回りにある、当たり前のように存在している物や価値観が、馬鹿みたいに複雑で、めんどくさいものに思えてきた。
特に「時間」についての章は、なんだか耳が痛い。

「これはある種の病気かもしれぬ、と私は言う。なぜかというとこうなのだ。かりに白人が、何かやりたいという欲望を持つとする。その方に心が動くだろう。たとえば、日光の中へ出て行くとか、川でカヌーに乗るとか、娘を愛するとか。しかしそのとき彼は、「いや、楽しんでなどいられない。おれにはひまがないのだ」という考えにとり憑かれる。だからたいてい欲望はしぼんでしまう。時間はそこにある。あってもまったく見ようとはしない。彼は自分の時間をうばう無数のものの名まえをあげ、楽しみも喜びも持てない仕事の前へ、ぶつくさ不平を言いながらしゃがんでしまう。だが、その仕事を強いたのは、ほかのだれでもない、彼自身なのである」


私もいつも「時間がない」と悩んでいる。
時間はいつもそこに「ある」のに。
自分の年齢を意識して、残りの人生を意識して、時間と格闘している。

台湾に着き、台南のゲストハウス「能盛興工廠」へ向かった。町工場2つを改装したらしく、めちゃくちゃ広い!
内装もかっこいいし、宿泊だけじゃなく展示やライブも出来て、木工や鉄工の作業場まである、とんでもなく素敵な場所だった。オープニングパーティーはもう始まっていて、沢山の人が飲んで踊って語らっていた。
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そこで出会ったアークンという男が、私たちを色んな場所へ案内してくれた。
アークンは、台湾の原住民族。
船に住み、魚を捕り、色々なものを作り、なんやかんやして生きている。
台湾中を旅して回るアーティストでもある。
歯が殆どなく、眉毛は刺青。
皆に慕われ、台南のBOSSのような人(左にいるのがアークン)。
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去年の夏、海で溺れて亡くなったダンさんに会いに行こう!とアークンが、その海へ連れて行ってくれることになった。しかし、「行こう!」と言ってから本当に動き出すまでが長かった。「10 minutes 行こう!」と言うのだが、10分経っても動く気配なし。再び「10 minutes 行こう!」と言って、新しい10分が始まる。これが延々2時間位は繰り返され、ふっと「動く時」が来る。
時間がもったいない!なんて言う人はいない。アークンの「10 minutes 行こう!」の度に、面白くってみんな笑っていた。

日本の線香みたいなのとお札みたいなのと、沢山の果物とビールを買い込んで海へ向かう。
お札を燃して、線香の煙でダンさんを呼ぶ。
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アークンは果物をそこにいた全員分、均等に分けた。小さいのも大きいのも一つ一つ全部。そして一緒に果物を食べ、ビールを飲んだ。
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一連の儀式はおそらくアークンのオリジナルのものだと思う。
海辺にはアークンが作ったという、ものすごく背の高い竹の塔があった。もちろん無許可。
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するすると塔に登り、テキパキとメンテナンスをするアークン。


アークンを見ていると、飛行機の中で読んだ「パパラギ」を思い出す。
好きな時に食べ、好きな時に眠る。
好きな場所に家を建てるし、飽きたら手放す。
居住空間である船も、放置してあったものを勝手に改装したらしい。
海で魚を穫った時は、その時居合わせた人と一緒に食べるんだと言っていた。
「世界を共有している」ような大らかさを感じて、ツイアビの言う「大いなる心」を目の当たりにしたような気分だった。

ゲストハウスに帰ると、「10 minutes sleep !」と言って、私たちの部屋の布団にゴロリ。
もちろん10分が過ぎても、安らかな時間は続く。
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「時間は静かで平和を好み、安息を愛し、むしろの上にのびのびと横になるのが好きだ」
「パパラギ」に書かれたこの言葉に、この時のアークンが思い浮かぶ。

夜は台湾最大の花園夜市に行った。
そのときも永遠の10分が始まったけど、結局存分に楽しむことが出来た。
心が動くときが、動き出すとき。
追いかけなければ、時間は逃げない。



台湾から帰ってきて、速攻で描いたのが、2月の4コマ漫画です。
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by nicolaus_92 | 2014-05-17 15:16 | 4コマ漫画